◆筆造人広徳は山に囲まれた盆地、熊野で筆造りをしています。

 筆の材料・動物の中で育った私は他の世界を知りません。私は馬鹿な人間ですから筆を持ったことがない人を見ていると残念なことをしているなと思う。
私も最初から筆の魅力に引き込まれたのではなくて、親父がなくなってから、真剣に筆造りの勉強を始めたのです。
筆は1本1本が手造りの工芸品であり、それぞれに顔があります。

 熊野では昔から筆師の気に入る筆は一生に何本もないと言われるくらい、非常に微妙な性質を持っている仕事なのです。筆師の指先の技巧を発揮して、それぞれの動物の毛の特質を生かして造ります。

 道具としての筆は使い手の心がけ次第で平凡な筆になったり、芸術表現に適する筆にもなりうるのです。
その意味では筆も使い手を選んでいるのではないかと思えるときがあります。筆もなかなか直ぐには結論のでない時間を要する道具だと思います。
こうした筆広く知っていただく機会つくっていきまして、筆の世界を使い手と作り手で共に楽しむ場にしていきたい。



◆全国伝統的工芸品・匠の技in旭川で筆造人広徳が製造実演

 
 北海道・旭川市で、2000年に(財)伝統的工芸品産業振興協会として設立25周年を迎える節目の年に当たることから、新世紀に向かって伝統的工芸品の一層の普及と生活への浸透を推進するため、旭川市の2000年記念事業を好機とし、北海道で初めての全国規模による「伝統的工芸品・匠の技in旭川」で開催されました。
 
 日本列島の全国各地で100年以上の歴史を重ねて受け継がれてきた伝統的工芸品産業の作り手が、今世紀に発展を築いた旭川市に一堂に集い、人に暖かく自然に優しい伝統的工芸品の技術の粋を披露して、工芸品のあるくらしの文化を提案しました。たくさんの道民が見学に来まして好評でありました。

 全国から集まった伝統的工芸品の職人が伝統的工芸品の技を来場者jの前で披露して、その実演を通して工芸品の魅力を説明しました。文房至宝では墨と紙は産地から販売員が来て、硯は赤間硯、筆は熊野筆が製作実演をして工芸品の筆の魅力を話しました。