◆筆造人広徳は山に囲まれた盆地、熊野で筆造りをしています。 筆の材料・動物の中で育った私は他の世界を知りません。私は馬鹿な人間ですから筆を持ったことがない人を見ていると残念なことをしているなと思う。
私も最初から筆の魅力に引き込まれたのではなくて、親父がなくなってから、真剣に筆造りの勉強を始めたのです。
筆は1本1本が手造りの工芸品であり、それぞれに顔があります。
熊野では昔から筆師の気に入る筆は一生に何本もないと言われるくらい、非常に微妙な性質を持っている仕事なのです。筆師の指先の技巧を発揮して、それぞれの動物の毛の特質を生かして造ります。
道具としての筆は使い手の心がけ次第で平凡な筆になったり、芸術表現に適する筆にもなりうるのです。
その意味では筆も使い手を選んでいるのではないかと思えるときがあります。筆もなかなか直ぐには結論のでない時間を要する道具だと思います。
こうした筆広く知っていただく機会つくっていきまして、筆の世界を使い手と作り手で共に楽しむ場にしていきたい。 |