筆の使用法と手入れ
新しい筆の使用法(固め筆)(さばき筆)
 固め筆の場合、穂の毛を真直ぐに保たせるために糊で固めて、字が一定以上の太さにならないために安定しているのが特長である。穂の付け根と軸の端を軽く指ではさむようにして持ち、指で穂先を丁寧にもみほぐすのが良い。歯でかんで穂先をおろすと言う人がいるがこれは避けた方が良い。糊を水につけてとる。この場合は水を多く含ませてると根元の方までくずれてしまうので気をつけなければならない。
 筆のおろし方の目安は、 大筆の場合、3分の1から半分位おろして使う。
 細筆の場合、3分の1位おろして使う。
 固め筆でも穂全部おろす場合もあるが腰の弾力が弱くなったりすることがあるので、なるべく書く字の大きさに合わせておろす。
 さばき筆の場合、製造の工程で糊をつけているので穂を根元まで軽く水洗いをして糊を落す。そしてきっちりと水気を拭き取ってから 穂全体にたっぷりと根元まで墨を含ませてから使う。墨を含んだ筆は筆圧の加減によって穂いつぱいの太さから小さい字まで書くこと ができる。穂がさばけているので穂の芯が見える。そのため、良質の毛を使っているか否かがわかる。

使い終わると筆の手入れが寿命を左右する。
 書き終わると、筆は入念に洗い墨を取り除く。布か紙などで水分をぬぐいとり、穂先を丁寧に揃えて直線状にして乾かす。筆巻きに収めて保存する。または風通しのよい所に架けておく。
  固め筆の場合、使用後は墨のついている部分をすみやかに少し濡れ気味の布か紙で吸い取るようにして墨をとる。使用後はこまめに墨をおとさないと墨が固まり、だんご状になって穂先が割れやすくなる原因になるので注意したい。
  特に細筆などは使用後そのままにして置くと毛先に悪い癖がついたりする。水を湿らした布または紙などで墨を拭きとって穂先を整えておくと長持ちします。
 さばき筆の場合、使用後は水で洗って墨をとる。大事な事は穂先よりも筆の根元部分をよく洗うようにしたい。よく洗わないと墨が残り根元に溜まると根元がだんご状に固まってくる。これが穂先が2ツ3ツに割れてくる原因なのです。

 羊毛筆で鋒先の毛の密度が濃い筆があります。こういう筆は洗った後で鋒の芯までよく乾燥しないことがあります。これは鋒の根元が腐る原因になりますから注意してください。くれぐれも長期間は筆にキャップなどの蜜ペイ状態にしないでください。
 
 市販されている古形の墨を使用した場合の筆の手入れは従来通りの手入れでいいと思うが、液の墨を使用した後の手入れはすみやかに墨をおとす。十分に洗わないでおくと墨が筆の芯毛まで染み込んでしまう。回を重ねていくと墨のカスが残って根元が膨らんできて、そのうちに穂先が割れてしまう原因になる。液の墨が筆について固まるとおちにくいので、こまめに筆洗いをする。筆の材料は動物の毛でタンパク質ある。毛は強いものではなく非常にデリケートなので手入れが大切です。

筆の保存次第で使い心地が違います。
 どんなに良い筆を選んだとしても、筆の材料は動物の毛であるので、使い方、保存方法を誤れば、それは寿命の短い筆となる。
 筆を長期間使用しない時は毛皮の保管と同じでナフタリンなどの防虫剤と一諸の桐箱などに入れて保管してください。またホコリとカビを大変嫌いますからくれぐれも乾燥した風通しのよい場所に保管しておくのがいい。これは同じ書道用品である紙、墨の保管法にも通じます。